南極大陸発見以前に南極大陸を示した 「ピリ・レイスの地図」

3、マッパ・ムンディス

text by 網屋徹

ピリ・レイスの叔父であるケマル提督は、1501年にモロッコ沖でスペイン艦隊と艦隊戦を演じている。この際、捕虜にしたスペイン兵から、コロンブスも使ったと言われる新大陸の地図を接収した。ピリ・レイスは、この新大陸の地図と、ポルトガルの航海案内書(13世紀ごろから大航海時代にかけて地中海あたりで使われていた海図「ポルトラノ」ではないかとも思われる)、そしてアレクサンダー大王の時代(在位は前336〜前323)に製作された20枚の古地図「マッパ・ムンディス」を参考にして、「ピリ・レイスの地図」を作成したようだ。

(ちなみに、「ポルトラノ」についても、世界最初の第図書館「アレクサンドリア図書館」に保管されていた地図や、アレクサンダー大王時代の地図を参考にしたという説がある。つまり、ポルトラノ自体がマッパ・ムンディスのコピーである可能性が高い。ポルトラノとピリ・レイスの地図は、言わば“同族”ということになるだろうか。)

さて、マッパ・ムンディス。「人間が住むあらゆる世界が示された地図」であったらしい。平たく言うと、「全世界地図」。これを参考にしたピリ・レイスの地図に南極大陸が正確に描かれていたことを考えると、おそらくは他の地域も正確に描かれていたのだろう。マッパ・ムンディス自体がすごいオーパーツだ。

アレクサンドリア図書館には、文学、地理学、数学、天文学、医学などあらゆる分野において、マッパ・ムンディス級のスゴイ文献が取りそろえてあったらしい。その数ざっと70万冊。写字生と呼ばれる写本作成の専門家を大勢抱え、世界中の文献を写本していたと言う。時には、あろうことか借りた原本を図書館に収めて文献の持ち主に写本を返す、なんてキワドイこともやっていたというエピソードも残されているとか。

アレクサンダー大王の跡を継いだプトレマイオス1世が建立したアレクサンドリア図書館は今で言う大学のような存在で、円周率を発見したアルキメデス、ユークリッド幾何学の祖エウクレイデス、地球の直径を計算したエラストテネス、天動説の祖クラウディオス・プトレマイオスなども、アレクサンドリア図書館で研究したと言われている。世界の学術の頂点として長く君臨したアレクサンドリア図書館だったが、ある時、膨大な蔵書と共に歴史からその姿を消す。原因と時期については諸説があってハッキリとしないが、とにかく消えてしまったことは事実である。

(またしても余談。いろいろ調べて回っていたら、2004年5月12日にBBCが「ポーランドおよびエジプトの合同発掘調査隊がアレクサンドリア図書館を発掘した」と報じた記事を見つけました。興味津々ですねぇ。)

ピリ・レイスの地図、あるいは前述のポルトラノがマッパ・ムンディスを参考にして作られたということは、マッパ・ムンディスは、歴史から姿を消したアレクサンドリア図書館とその蔵書たちとは違う運命をたどったということになる。それが、なんの因果でピリ・レイスの手に渡ったのか。その経緯についても、謎というロマンが隠されているようである。

(さらに余談。たかしげ宙原作、皆川亮二作画のマンガ「スプリガン」の第4巻に掲載されている「龍脈地図 御神苗抹殺計画」という話は、ピリ・レイスの地図とマッパ・ムンディスの伝承を下地にしてます。興味のある方はぜひぜひ。ていうか、ハマります。)

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