実録?百物語

2、格安物件

text by 高橋カオリ

友人I君が前に住んでいた部屋の話。

I君は8部屋ある2階建てのアパートに住んでいた。そこは広めの1Kで家賃も安かったため、気に入って長く住んでいたのだが、なぜか住人は2人だけ。自分ととなりの部屋の人しかいない。引っ越してくる人がたまにはいるものの、いつも1〜2週間で退去してどこかへ行ってしまう。

I君の彼女は、「よくこんな気持ち悪いところに住んでいるね」と言っていたそうだ。ある日、その部屋で彼女が体験した不思議な話を聞かされた。

「テーブルの下に人がいた」「寝ていたらベッドの下から水音がした」って。

I君は特に気にするタイプでもないので、そのまま住み続けていた。


ある日、となりのとなりの部屋に人が引っ越してきた。しかし、やはりすぐに出て行ってしまう様子で、出て行くであろう前日にたくさんの人が集まって飲み会をしていたらしい。酔っぱらった人が部屋のドアをドンドン叩いたり、大声を出したりと騒々しかったが、I君は気にせずに眠りについた。

翌朝。ゴミを出す時に、となりのとなりの部屋の前を通った。窓から部屋の中が見えたので、そっとのぞいてみたのだが、誰もいない。ふと目をやると、壁に収納できるタイプの、備え付けのベッドが引き出されているのが見えた。

あっと驚いた。そのベッドには、血の跡と思われる、大きなドス黒いしみがついていたそうだ。

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