実録?百物語

24、お化けトンネル その1

text by 網屋徹

幼なじみのYNくんから聞いた、彼が大学生のときの話。

鹿児島県の南部に、「お化けトンネル」と呼ばれるトンネルがある。そこに車で行くと、必ず事故るというジンクスのある場所だ。大学のサークルの仲間と一緒に、そこへ肝試しに行ったんだと。少人数の組でトンネルを歩いて通り抜ける。帰りは全員一緒に帰ってくるという趣向。


肝試しといえば、男女のペアが鉄則だが、人数の関係で彼と女の子2人という組になったらしい。順番が回って、彼らがトンネルに入る番になった。

彼をはじっこにして、横一列になって歩いたらしい。女の子たちは怖がっているが、YNくんはおばけだとかの話はほとんど信じないので、怖くも何ともなかったそうな。

が、どうもおかしい。前を向いて歩いていると、自分の横に3人の姿が見える。1人多い。はっと振り返ると、女の子2人しかいない。しかし、前を向くと、やはり3人の姿が見える。彼と反対側の端に、男の姿が見えるらしい。

それが怖い雰囲気ではなく、ああ、一緒に歩いてるんだ、というか、守ってくれてんだな、という感じだったそうな。目の端で見ると、彼の反対の端にいるのは、中肉中背で眼鏡をかけた、特にこれと言って特徴のない男だったとか。

無事にトンネルを通り抜け、みんなが揃うのを待った。それぞれに怖かったーなどと言って出てくるが、1人として「見た」という者はいなかったらしい。

全員揃ったところで肝試しは終了。車まで戻って帰路についたが、お約束通り、中の1台が事故ったらしい。自損事故でケガ人もなく、たいしてひどいぶつかり方ではなかったそうだが、不思議なことに車の損傷はかなりひどく、結局は廃車にしてしまったとか。

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