実録?百物語

28、手

text by 網屋徹

元同僚のOくんから聞いた話。

奈良県にある実家に住んでいたときのこと。自室の隅で、壁に向かう格好で寝ころんで漫画を読んでいた。すると、突然壁から白い女の手が出てきて、両腕を捕まれてしまった。その手は、すさまじい力で彼を壁の中へ引っ張りこもうとする。これはシャレにならんと思って、めいっぱいの力で抵抗したんだと。

なぜかその手は、片方の腕だけを引っ張ってくる。右腕を引っ張る力に抗うと今度は左腕を、左腕を引っ張ったかと思うと今度は右腕を、という具合に。

およそ10分、そんなことを繰り返した後、手はふっと消え去ったそうな。

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