実録?百物語

36、電話口で

text by 網屋徹

大学時代の後輩で、霊感の持ち主であるNHさんからきいた話。

ある晩、クラブの1年先輩であるAくんと電話で話をしていたらしい。彼女とAくんの家は100mも離れていないというのに、延々と長電話をしてたんだと。

ふと気づくと、電話の向こうで変な物音が聞こえる。低音がうなっているような、いやーな音だったらしい。先輩んちのステレオ壊れてるのかな、と思ったが、向こうが何も気にしていない様子なので、そのことについては黙っていた。

そうこうしているうちに、その音がだんだん大きくなり、はっきり聞こえるようになってきた。ホラー映画に出てきそうな音、実にいやーな音だ。その時になって、あ、これはポルターガイストのような霊障だ、と気づいた。

めちゃくちゃ怖かったそうだが、Aくんが気づいている様子もないので、自分だけにしか聞こえてないと思い、必死で我慢したらしい。相手を怖がらすまいという一心で、普通に会話をして、普通に電話を切ったそうな。

後日、Aくんに「実は、こないだの電話の時にこんなことがありまして…」と話すと、「え、お前も聞こえてたのか!」と言われた。Aくんも、NHさんを怖がらすまいと必死で耐えていたんだと。

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