実録?百物語

53、地蔵

text by 網屋徹

元同僚のKOくんから聞いた話。学生時代に
友達数人と遊びに出かけて、帰りは夜になってしまったそうだ。rnrnその帰り道、神奈川県のとある山道の
途中で、道の脇にぽつりとたたずんでいるお地蔵さんを見かけたんだと。せっかくだからお参りして、夜道の安
全をお願いしようと、車をおりてお参りしたそうな。rnrn再び車に戻り、先に進むことにした。しばらく行
くと、カーブの途中で「死ぬよ…」とつぶやく声が聞こえた。「変な冗談やめろよ」と運転していたAくん
が怒ったように言った。しかし、さんざん遊び疲れた後だったので、口を開く者もなく、それまでしばらく沈黙
が続いていた時だったらしい。rnrn気のせいで済まされてしまったのだが、しばらくするとまたカーブの途
中で「死ぬよ…」という声が聞こえた。確かに誰かが言った、いや言わない、と口論になりかけた時、大声
で「死ぬよ!!」と聞こえたんだと。rnrnAくんはとっさに急ブレーキを踏んだ。フロントガラス越しに前を
見ると、直線だと思っていた道は急なカーブを描いており、車は崖っぷちのぎりぎりで止まっていたそうな。r
nrn誰とはなしに、これはきっと、さっきのお地蔵さんが助けてくれたに違いないということになり、お礼を
言うためにお地蔵さんのところまで戻った。お地蔵さんの前で「おかげで僕たち死なずにすみました、ありがと
うございます」とお礼を言うと、さっきと同じ声でrnrn「死ねばよかったのに…」rnrnと聞こ
えたそうな。

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